よくいろんなところで引用される寓話だがこんなものがある。

ある日漁師が丸木船に乗って家に帰ると、外国から来た資本家に会います。彼は漁師に何故こんなに早く帰って来たのだと訪ねます。漁師はもっと長く漁をしても良かったが、家族を養うのに十分な魚が捕れたのでこれ以上働く必要はないのだと答えます。
「では、開いている時間は何をするのです」と資本家は訪ねると、漁師は「そうだな。少し釣りをしたり子供達と遊んだり、暑いときはみんなで昼寝をしたりして、晩にはみんなで食事をして、その後、仲間と集まって音楽を楽しんだりする。そんな感じかな。」。
資本家はこう持ちかけました。「私は大学で教鞭をとっていてあなたのような事例を研究してきました。あなたを助けたいのです。あなたはもっと長く漁に出てもっと稼いだ方がいいですよ。そうすれば収入が増え、大きなボートを買うことが出来ます。そうすれば今の丸木船よりさらに収入が増え、やがてトロール船の船団を持つことが出来ます。」
「それから?」と漁師は訪ねました。
「それからが面白くなるのです。そうすれば仲買人を通すことなく直接工場とやりとり出来ますし、自分で工場を持って魚の加工場を始めることさえ出来ます。そうなれば村を離れてパリやニューヨークに行って事業を展開したり、株式市場に上場することも出来ます。大金持ちになれますよ。」
「それはどのくらいの時間がかかるんだい」と漁師は訪ねました。
「おそらく10年から15年くらいでしょう。人生が本当に面白くなるのはそれからです。そうなればリタイヤして環境のいい田舎に落ち着いて、ゆっくりと釣りをしたり子供と遊んだり、暑いときには昼寝をして休んだりできますし、家族とともに夕食を楽しんだり晩には仲間とともに音楽を楽しんだり出来るのです。」

対照的な話にこんなものがある。

そこは昔は魚が豊富に捕れる湖があって、そばにある村も十分に潤っていました。しかしあるとき外国から来た資本家がもっと豊かになるためにエンジン付きの船と網を使った漁法を勧めました。漁師はその話に乗ってみることにしました。すると確かにたくさんの魚が捕れたちまち豊かになりました。しかし、漁師がたくさん魚を捕った分だけ他の漁師は魚が捕れなくなりました。
やむなく他の漁師も船と網を買い、対抗して魚を取り始めました。
すると対抗上、もっと魚を捕るためにはさらにたくさんの船を買わなければなりません。その軍資金を得るためにも、また食べるにも売るにも多すぎるくらい捕った魚を高く売るために、資本家の薦めに従って今度は新たに魚の加工場を始めることにしました。
周りの漁師もさらに対抗するために加工場をつくりました。
こうして競うように魚を捕り合ううちに、たくさん捕れていた魚はだんだんと乱獲がたたってとれなくなってきました。漁師たちはさらに船を増やして魚を捕ることにしました。
魚はさらに数を減らしていきました。さらに悪いことに魚の加工場からの排水で魚に限らず湖の生き物はどんどん数を減らしていきました。
漁師たちが気がついたときには既に手遅れでした。彼らに残されたものは捕るべき魚のいない汚染された湖にあるたくさんの船と加工場、そして膨大な借金だけでした。

 残念ながら私たちは後者の話を選択し、もはや引き返すことが出来ないところまで来てしまったようだ。


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