CGの質感

 CGにも写真のように質感の違いがある事に漠然と気が付いたのは、今から10年近く前だろうか。
それがはっきりと分かったのは、雑誌の記事で同じシーンを何種類ものCGソフトで試しにレンダリングして見る企画の記事を書いたときだった。

 写真のフィルムやレンズの違いのように、絵の具の同じ赤の色でもメーカーによって色が微妙に違うように、CGソフトによっても微妙に(あるいははっきり)質感の違いがある。雑誌の評価記事などではそれをソフトの機能の優越のように書いてある場合もあるが、どちらかと言えば個性の違いと思った方がいいだろう。どれが優れているとか言うのではないのだ。

 僕の経験から言えばLightWaveなどビデオ出力をメインに置いているソフトの場合、あまりどぎつい色使いだとTVのNTSCモニターで見たときに色が滲んでかえって汚くなってしまうため押さえた色使いに仕上がるようになっているようだし、(もちろんレンダリング時の設定によって、調整は可能なのは言うまでもない。)対してStrataなどの静止画をメインに置いたソフトの場合、印刷ではっきり出るような色づかいになっているようだ。
 あと、そのソフトを作った国によっても違いがあると思う。たとえばフィルムなどでもその国の人の肌が一番きれいに見えるように調整されているので、コダクロームで撮るとなんとなく外国の色使い(多少気分もあるが)になるし、対してフジなどの国産メーカーのフィルムでは日本人の肌色が栄えるような色づくりになっているそうだ。
 また日頃意識して無くても日常見かける色味は頭の中に刷り込まれているらしい。これは失敗談になるのだが、以前ゲームの背景を作る仕事をしていたときにテクスチャーを箱根に旅行したときに撮った遠景の山や空を使ったら、特に写真に詳しくなく山歩きをしない面々だったにも関わらず一発でばれてしまって、みんなからこれじゃあファンタジーの世界じゃなくて箱根だと言われたことがある。
 確かにそう言われてみれば、ユタの砂漠に近いクリアな空と真っ赤な岩がごろごろしている所に本社があるStrataなどは、あくまでピーカンでどぎついまでに影が出る彩度の高い仕上がりのようだし、ヨーロッパで開発されたソフト群(今は無きEXPLOREなど)では、向こうの曇り空の下のようなシックな色使いのように見える。

 そんな様々な質感のなかであなたが一番好きなソフトはどれですかと言われたら、僕は真っ先にRenderManの質感をあげるだろう。アクリル画で書いたスーパーリアルイラストレーションのような、一見リアルだけれど実は本物以上にディフォルメされたあの仕上がりが好きなのだ。(余談だがRenderManの質感はクライアント受けもいいのか、以前作ったRenderManのカットを見てあのタッチで作ってほしいと言う注文がいまでも時々ある。問題はすでにRenderManがきちんと動作する環境が手元にないことにあるのだが・・。)あの独自の質感はレイトレーシングを使わずになるべくリアルな絵を作るために様々な方法で影や写り込みを出しているところにあると見ているのだがどうだろうか。

 まあ、どんな方法で計算しているにせよ目的の絵が得られるなら構わない。CGを作る者としてはいろいろ調整出来るにせよ使うソフトによってある程度自分のタッチが決められてしまう以上、自分の好きな質感の絵を作ってくれるソフトを使いたいものだ。
 そうした点から考えてみるとRenderManは一長一短である。仕上がりの良し悪しは最初に書いたようにあくまで作り手から見て(たまにはクライアント側からみての場合もあるが)気に入るかどうかの問題なので省くとして、いい点から見ると使っている人が少ないと言うのがある。これは逆に言えば特にレンダリング時に細かな設定をしなくても、独自の質感の絵になると言うことだ。これがStrataやLightWaveなどの普及しているソフトの場合、作り手側がいろいろ設定してやらないとすぐにどこかで見たような質感(つくるものによっては絵自体も)になってしまうので大変である。
 逆に短所は同じ理由で使いこなすためのノウハウや環境が手に入りづらいと言う点がある。RenderManの場合、別にマイナーなソフトでは無いのだがいかんせんろくなGUIが付いてないのと、超ハイエンド指向なのはいいとして値段まで超ハイエンドだと言うことだろう。一昔前まではMacRenderManなど安価な環境もあったのだが、いまでは完全にプロ向けの価格帯のものになってしまった。BMRTなどを使えばいいのだろうが、言葉の壁の問題などもありなかなか取りかかれないでいる。しかし、CGで食べている以上いつかは自分の好きな質感の絵を作るソフトを自分のメインの制作環境に取り込まなくてはいけないと思い続けている。


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